ホーム > 【木村太郎さん特別寄稿】 その1
|
||||||||||||||
「ヨットの楽しさって何ですか?」
インタビューで、私がヨット乗りだと知るとこう質問されることが多い。 愚問だが、聞いてくるのは職業上の後輩に当たるので、むげにもできない。 「ままならないところですかね」 「???」 「例えば、葉山から江ノ島へ行くとしますね。パワーボートなら100回走ってもほとんど同じコースを走るでしょう。しかし、ヨットの場合は100回とも全く違ったコースになるはずですよ。風も潮も日々まったく違うのだから」 「それが楽しいのですか?」 「楽しいじゃないですか。毎回違う工夫をして走らなければならないのだから」 「『悪女の深情け』というやつですかね」 「ウーン…」 こればかりはやったものしか分からない世界のようだ。 そこで改めて考えてみると、ヨットという遊び道具は「走らせる」ことを楽しむものと言えるのだろう。風のないとき、強すぎるときどう船を操って目的地に行くか、あるいはレースで相手艇より先に行くか、それが楽しいのだ。 とはいえ、パワーボートの楽しさを否定するわけではない。ただパワーボートはフネを走らせて何をするかという楽しみ方だろう。 釣りの場合が多いようだが、水上スキーやウェイクボードを曳くのもよいだろう。あるいは美女多数をのせて徘徊するのにも残念ながらヨットよりは有利なように思える。 私自身、年をとって楽をしたくなりパワーボートに乗り換えようかと考えたこともあった。セールを上げ下ろしする労力もいらないし、オートパイロットを使ってのんびり走り、時化ればさっさとマリーナに逃げ帰ることができるのが魅力だった。 しかし、しょせんはヨット乗りの貧乏性というか「走らせる」こと以外にフネで何をするか思いあたらず、結局モーターセーラー的なフネに落ち着いたのだった。 ボートショーに来場する方たちも、フネのきらびやかさばかりに目を奪われず、フネをどう楽しむかという視点で品定めをすることをお奨めしたい。 ついでに、もうひとつよく聞かれる愚問にこういうのがある。 「あなたにとってヨットとは?」 「単なる道楽ですよ」 |
||||||||||||||
©2007-2008 Japan Boating Industry Association All rights Reserved. |
||||||||||||||